生活保護法の改定が、非公開で検討されています

 生活保護法の改悪の為に、芸能人を人柱にするというビックリするような手法で世論操作を行う自民党には、憲法25条や人権意識の欠如があからさまです。捕捉率が30%程度の生活保護ですから、現在の3倍の生活保護受給者になるまでは、生活保護法が基本の目的を達成していません。生活保護申請の門戸を狭くするなどはもってのほかです。

 <2012/5/29>

日本弁護士会『我が国の生存権保障水準を底支えする生活保護基準の引下げに強く反対する会長声明』

<全文>

 

更に

『生活保護制度の「新仕分け」に先立って厚生労働省と財務省の提案の撤回を求め、生活保護基準の引下げに改めて強く反対する会長声明』

<全文>

はじめに

生活保護の支給に期限を設けようとする検討作業が厚生労働省で進んでいます。

 「稼働能力」がありながら就職しない場合は、生活保護を打ち切ると云うものです。

 

<問題点>

 

 ① 「稼働能力」の認定を、現在の検診命令方法で良しとするのか

 ② 求職活動をしても、仕事が無い現状は不問にして良いのか

 ③ 非正規短時間の仕事しか無く、生活保護基準以下の月額賃金の仕事しか手に入ら無かった場合は

 ④ 「指導」の名のもとに、当事者の人格を傷つける発言を繰り返すケースワーカの存在は

 ⑤ 生活保護を打ち切って、ホームレスを作る事を「法」の名のもとに実行するのか

 ⑥ 再びホームレスになった場合の救済は

 ⑦ 仕事をする事

 ⑧

 

① はじめに・生活保護法は「飴の治安維持法」

 

 生活保護法の改定内容についての話の前に、今回の改定の意図が「予算の縮小」である事が最大の問題点です。

 最低限の生活を国が保証する事は憲法の定めですが、それを実現するための法律としての「生活保護法」を、予算枠を基準に縮小してもよいのでしょうか。現在でも、厚生省の定める最低生活費を下回る生活を余儀なくされているにもかかわらず、生活保護を受けられない世帯が沢山ある事も統計で明らかです。生活保護の要件を満たしながら、保護申請を窓口で追い返されている人も沢山います。現在の「生活保護200万人」は、生活保護の窓口が沢山の相談者を追い返した結果ですから、本当は更に沢山の予算を必要としています。

 勿論、無尽蔵な予算は湧き出てきません。

 生活保護を必要とする人達が生まれてくる現状の改革が無ければ、問題は解決しません。最大の要因は、非正規使い捨ての雇用を利用している企業の問題です。原因と結果を考えて、原因に手を付けない事には、問題の解決にはなりません。

 

 もし、予算の為に生活保護受給者を減らすとすれば、生活の当てが無い人が更に増えて、スラム街の形成もあり得るのではないでしょうか。路上にホームレスがあふれ出すのではないでしょうか。これが、生活保護法は「飴の治安維持法」と云われる所以です。この点も忘れてはならないと思います。

 安定的な社会をどの様に作り維持していくかの観点を持ち、雇用や貧困対策の全体図の中で、本当に適正であると云える制度作りをしなければならないと思います。

 

 大阪の提言から端を発した今回の、予算縮小の為の改定検討に、社会不安を助長させる反社会的な要素があるので、私は反対です。

 

 

「稼働能力」について

① 「稼働能力」の認定を、現在の検診命令方法で良しとするのか

 

 「仕事が出来る身体的な能力があるにもかかわらず、仕事に就かないものは、生活保護を打ち切る」という、今回の改定の本命ですが、その稼働能力の判断に疑問があります。

 これまで多くの保護申請やその後の生活のサポートに関わってきましたが、世間の常識を逸脱していると思える事例に沢山遭遇しています。

 

 生活保護の申請時に、保護課の相談員が「働けるか」と尋ねます。「腰が痛くて、力仕事は出来ないです」と答えると、検診命令が出されます。仕事が出来るか出来ないかを医者が診察して判断するのです。結果、「座って3時間ほどの事務作業は可能」との診断が下されます。ケースワーカーは、出来る仕事を探せと命令します。

 (わたしは、治療が先だと思うのですが)

 さて、「座って3時間ほどの事務作業」と云う仕事はあるでしょうか。また、土方仕事しかしたことの無い高齢者に、事務作業が出来るでしょうか。しかし、仕事が出来ると診断されたのだから、仕事に就けとその後は云われ続けます。

 過酷な労働で体を壊した状態にあるにもかかわらず、治療を優先するように指導するのではなく、仕事を探せといいます。「仕事が見つからない」と云えば、「真剣に探していない。サボっている」とされ、「指導に従わないので、生活保護を打ち切るぞ」と脅されます。何度も何度も攻め立てられると、当人は精神的に参ってしまいます。そこを見定めて、「生活保護を辞退しなさい」と云って来ます。行政の側が打ち切ったのでは無く、当人が辞退した形での保護の終了にします。この様な事の当事者の実名を挙げる事が出来る事例を、多く知っています。

 (気持ち的に追い詰められて再び路上に落ちた方を、再び保護につないでもいます。)

 この卑怯極まりない実態がある生活保護行政現状を、まずは知って欲しいと思います。

 

 「仕事に就け」が、当人の自立を促すのではなく、保護の辞退届を書かせる為の道具になっている実態に、新たに法を改定しなくても大丈夫だろうと、突っ込みを入れたくなります。

 

③ <It is an offense against humanity

 

 稼働能力の判定に、バカな医者が利用されている処から始まる、世間の常識では想像のつかない悲劇があります。

 

 稼働能力で検診命令を受けるのは、当人が「腰が痛い」とかの症状を訴えて、働ける状態で無い事を告知した場合です。

 「大丈夫」と云ってしまえば、当然の結果になります。自覚症状があり、私たちには告げていても、保護申請時に言わない方が居ます。後になってから、私たちに相談をかけてくる場合もあります。「医者には行きたくない」と云う方は、話してくれません。薬で症状を抑え続けなければならない病気が沢山ありますが、その場合でも継続して病院へ行くのを嫌う方もいます。

 「自業自得」では無いと思います。少々の病気でも、仕事は出来るとして、ケースワーカーから求職活動を要求されます。それが嫌で、200使い血圧を薬で抑えながら清掃の仕事をしている方が居ます。「命と引き換えにするな」と忠告するのですが、「ケースワーカーに嫌みを言われるよりましだ」と云います。このケースワーカーが、人道にもとる罪で罰せられないのが不思議です。

 

 また、内科や外科関連の病気ならば、当人が自覚症状を訴える事が出来ますが、しかし精神疾患や障がい、社会生活に適応できない状態は、よほど酷くなければ、「仕事しろ」が続きます。元ホームレスの方には、精神疾患を持っている方が多く見受けられますが、心療内科の診察まで指導するのは大変です。

 

 しかし、現状のケースワーカーでは、当人に寄り添っての考えがありませんから、到底サポートできる能力は無いと思っています。この矛盾が生活保護受給者に重く圧し掛かっています。

 

④ 仕事ができる様にする為なか、保護を打ち切るためなのか

 

 仕事をする事で、「仕事が出来る」と判断されるのは、当人の申告から始まります。肉体的な病気は申告され、検診命令の対象になり、「短時間の簡単な仕事が出来る」の判断が医者からくだされます。しかし、精神的なものや知能的なものは、既に診断が下っていない場合は、申告されません。疾患や障ガイは、見過ごされてしまいます。

 丁寧に当事者の状態を理解しようとすれば、ケースワーカーでも気付くはずですが、心療内科榎の通院をケースワーカーに勧められて話を聞きません。私たちも、遠回しに通院を話すのですが、当事者がなかなか応じません。「だから働けないと」ケースワーカーに言わないと行けないのに、ぐずぐずします。私たちは医療には素人ですから、適切な事が出来ていない様に思いますが、障害や疾患の比率は高いように思います。

 

 「検診命令」が、仕事をさせる為のものではなく、病気を発見するものになればと思います。

 

 こんな当たり前の事が、生活保護申請の段階で出来ていないのです。生活保護行政の現場の実態が、この一例でもわかると思います。

 

仕事が無い

 生活保護の改定作業で、「5年間仕事につけなかったら、保護の打ち切り」と云う事があります。 

 (保護を打ち切って、野宿生活をしろと云うのでしょうか。酷い話です。) 

 

① 仕事が無い状態は、だれの責任でしょうか。

  求職活動をしている生活保護受給者は、仕事が見つけららません。求職活動は65歳までが要求されています。ほとんどの方が、資格も技能もありません。この様な条件の人を、人が余っている時に、企業経営者の立場として、雇いますか。

 現状は、50代でもダメで、40代ならば短期や短時間の仕事に就ける事があります。

 まったく、仕事が無いのです。
 結論的にいえば、市の保護課が仕事を作って、その仕事をさせながら、次の仕事を見つけるようにすべきです。仕事をしてない期間が長引けば、余計に仕事が出来なくなる事も、これまでの事例で知っています。市役所関連の簡単の仕事を、企業に儲けさすのではなく、仕事が無い人の為に使うべきです。 「ボランティア活動」の話がありますが、仕事とボランティア活動は違います。仕事をして、任せられた仕事の責任を果たして、一週間の予定の中に定期的な仕事が組み込まれ、日々の張りが出来、賃金を手に入れると云う事が必要なのです。 ボランティアで奉仕する事を強制されたのでは、嫌な思いを「ボランティア」に対して持つ事になり、ボランティア団体にすればひどく迷惑な話になります。

 景気の回復は望めないし、失業者、生活保護受給者は増えるばかりなのですから、市役所が仕事を作る以外に当面の対処療法は無いと思います。

 そっ、「当面の対処療法」で良いのです。その責任を行政が取るべきです。 

 

② 求職者支援制度は?
 仕事が無いので、雇用保険を受けられない失業者に月10万円を給付し職業訓練を行う「求職者支援制度」が10月から法制化された。

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<毎日新聞 2011年9月29日 東京朝刊>

「失業者無料職業訓練:駆け込み開講、急増 参入条件、来月から厳しく」


 失業手当を受けられない人が無料で職業訓練を受講でき、所得が低い人には月額10万円の生活費も支給される国の緊急人材育成支援事業が10月1日から「求職者支援制度」に衣替えし、恒久化される。ところが現行事業の最後となる9月開講講座の定員数は10万人を超えているのに、新制度に変わる10月分は1万人と10分の1だ。新制度への参入要件が厳しくなったため、基準が緩い間に「駆け込み」で開講し、10月以降は様子見という業者も多いとみられている。 現行事業は自公政権が09年度の補正予算で基金を積み、11年度末までの時限措置として始めた。民間業者によるパソコンや介護などの技能訓練が中心だ。 だが、一部講座には「講師がテキストを棒読みするだけ」といった苦情が寄せられたため、民主党政権は今年5月に成立した法律で恒久制度とする一方、参入業者には▽申請する訓練と同等の訓練実績が過去1年以内にある▽現行事業での就職率が30%または35%以上--などの条件を課した。 厚生労働省などによると、4~8月の講座の総定員数は月平均5万人程度。それが9月に10万5064人(4552コース)へと倍増。したかと思えば10月は一転、1万836人(501コース)まで急減している。IT関連の訓練をしている業者は「新制度でも事業が成り立つか見極めたい企業が多い」と言う。

 【石川隆宣】

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 今年の9月までの時限立法期に受講している方を知っていますが、「パソコン教室」などは仕事の役に立つ内容ではありません。 東京新聞の『さらに取り組むべきことは長期雇用の確保と賃金などの格差是正である。焦点は非正規労働者。雇用契約は細切れではなく一定期間を確保する。賃金も正社員と遜色のない水準に引き上げる。失業防止と再就職しやすい社会を実現することは、中間層の拡大にもつながる国家の最重要課題である。』と云う記事のまとめが大切だと思います。

 

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<2011年10月12日  読売新聞>
「受給者のままでいい」 生活保護4か月連続200万人
 4か月連続で200万人を上回った生活保護受給者。今年に入って59年ぶりに大台を突破した背景には、働くことが可能な世代の受給者の急増があり、そこには、ひとたび生活保護を受けると泥沼に沈むように働く意欲を失ってしまう受給者の姿も浮かぶ。全国最多の約15万人の受給者を抱える大阪市で、現状を探った。(鈴木隆弘、梶多恵子) 午前8時半。開庁時間を迎えた大阪市西成区役所に、長い列が吸い込まれていった。 月1度の生活保護費の支給日だった9月30日、現金支給を受けに来た約200人で、3、4階の窓口前は満員電車並みに混雑し、「1列に並んで下さい」と職員が大声で呼び掛けて回る。同区は人口約12万人のほぼ4人に1人が受給者。市内24区の中で、群を抜く。 午前9時のチャイムと同時に受給者は一斉に窓口に押し寄せ、職員から茶封筒を受け取る。その多くは50~60歳代の男性だが、若年層もちらほらだがいる。 Tシャツにジーパン姿で茶髪の男性(34)がいた。窓口を離れ、1階に下りると、待ち構えていた若者に受け取ったばかりの保護費を手渡す。相手はアパートの大家で、家賃4万5000円を支払ったのだという。 あいりん地区にある、そのアパートを訪ねた。古い簡易宿所を転用した6階建ての典型的な受給者向け。6畳一間には備え付けのテレビと布団、冷蔵庫があるだけで、「1人でいると刑務所にいるような気持ち」と男性。他の住民との付き合いは全くないという。 数年前から仕事をせず、生活保護は5月から。住宅扶助も含めた月12万5000円を受給するが、家賃と光熱費を除くと「ほとんど酒代」。ガールズバーやキャバクラに出入りし、2、3日でなくなることもある。2年前にアルコール依存症と診断され、借金も数百万円あるという。 建築作業員など様々な職に就いてきたが、人間関係が煩わしくて続かず、親にも勘当された。それでも「最初は生活保護が後ろめたかった」。職探しに励み、清掃会社の面接を受けたこともある。だが不採用。以後、就職活動はやめた。 「仕事しなくても金が入っちゃう。やる気なくしますね」と、男性は苦笑いを浮かべた。将来の夢は「仕事をして家族を持ち、普通の生活をすること」。このままではダメとわかっている。でも、どうしていいかわからないという。 「生活保護でようやく、人並みの生活ができるようになりました」と、区役所で出会った別の受給者の男性(37)は笑顔で話した。保護を受けて4年。この間仕事はしたことがない。 約10年前に両親が死亡し、実家マンションを家賃滞納で追い出された。あいりん地区の簡易宿所で暮らして派遣で清掃などに従事、仕事がない時は野宿していたが、不況で仕事が途絶えた。 うつ病と診断され、生活保護を受けたが、初めて保護費を受け取る時は「恥ずかしかった」。だが就職活動は、100件近く応募して面接に至るのが10件ほど。ある工場に採用が決まった時も、1日7時間の労働が「厳しすぎる」と辞退した。 医師からは「じきに完治する」と言われているが、「まじめに働いても、月10万円ちょっとでは……」と働く気が起きない。ハローワークにも行かず、スロットマシンで遊ぶ日々。「プロになるまで、生活保護のお世話になろうかな」。悪びれることなく言った。

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 生活保護を受けながら長期に仕事をしていない人の中で、仕事をする気が無い人の話を拾い集めた記事です。
 生活保護で支給されるお金で、一か月の生活は余裕が無い状態です。「これで良し」と思っているのでは無く、「仕方が無い」と思って諦めているのです。「怠け者」と非難するだけで、問題は解決するでしょうか。保護を厳しくするだけで、問題は解決するでしょうか。 野宿を経験し、経歴にブランクがあり、資格や技能の無い方が、何度も何度も就職の面接で断り続けられると、自分に自信が無くなります。ついには現実から逃避する状態になります。時には精神疾患に陥って、更に抜け出せなくなります。 現在の極端に低い求人倍率でも、「仕事はある」状態ですが、その競争に勝てるはずがありません。ですから、仕事が無いのと同じです。読売新聞の取材に応じた人達も、「現状」を話したかもしれませんが、本音は話していません。本当は、働いて評価され、その仕事で生活できる賃金が手に入る事を望んでいるのです。
 本当に救済できる制度を作らないと、これから更に生活保護受給者は増えていきます。

 

<続く>

保護打ち切りで良いのか

生活保護見直しへ…資産調査・求職支援の厳格化
 生活保護制度の見直し作業を進めている厚生労働省は9日、保護申請者の資産調査の強化や、求職者支援制度の運用の厳格化などを柱とする見直し案を固めた。
 地方との協議で大筋合意しており、12日に公表される中間とりまとめ案に盛り込まれる。見直し案では、申請者の資産調査で、銀行などの金融機関本店に一括して預貯金残額などを照会できるよう制度の整備を進め、不正の芽を摘む。これまでは、本人申告などに基づき各福祉事務所が地域の銀行支店などに問い合わせていたが、調査の限界が指摘されていた。
 今年10月に本格スタートした「求職者支援制度」は、月10万円の給付金を受けながら、パソコンなどの職業訓練を受講する仕組みで、生活保護との併用も可能。見直し案では、受給者が理由なく訓練を中止し、福祉事務所の指導でも復帰しない場合は、保護の停止や廃止を可能にする。これまでは明確な規定がなかった。
(2011年12月10日03時06分  読売新聞)

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 指導に従わない事は間違っていますが、当事者に適した「職業訓練」である事を願うばかりです。ただ通っているだけ状態も見受けられます。(パソコン教室などは、ほとんど仕事の役に立たない内容の物しか知りません)

 で、指導に従わなかった時に保護の打ち切りをして、当人をホームレスにするつもりなのでしょうか。生活保護基準以下の存在を作って良いはずはないと思うのですが。

 解決策を「指導」を基準にするのではなく、当事者が仕事につけて生活保護を終われる仕組みを作らないといけないのでは。