自立準備ホームの委託事業は、2020年3月31日で終了しました。
今後は、生活保護の申請で支援します。
<以下が更生保護の批判も含めた私たちの考え方です>
ホームレス状態の生活で困って罪を犯す方もおられますし、罪を犯したことで釈放時にはホームレスになってしまわれる方もおられます。
刑務施設から釈放されるのは、「刑務所から仮釈放になる」場合だけでなく、軽微な罪で「不起訴処分」の場合や、「罰金刑の労役後」、あるいは「刑の執行猶予判決」、「満期出所」の場合があります。
「仮釈放」の場合は、保護観察期間で補導援護を必要としますから、保護会などの更生保護施設入所が必要ですから、私たちの支援の対象になりません。
その他の場合が、私たちの支援対象者です。この場合には「更生緊急保護」の制度がありますが、当座の寝る所と食事が提供されるだけで、当面の生活費は支給されません。これでは、その後の生活が見えてきません。これからの再出発の為に、当面の生活費の確保が必要です。また、一時的な仮の宿を提供するのではなく、直ぐに新しい住居を確保することが、再出発の気持ちを固める事の役に立ちます。病気があって、直ちに病院に行く、あるいは入院しなければならない場合もあります。しかし医療費の扶助はありません。更生保護では、これらの重要な3点の事が出来ません。
ですから私たちは、出所後直ちに生活保護の申請をします。生活保護は生活費の扶助だけでなく、住宅取得扶助がありますから、自分の住居を確保できる資金が手に入ります。(しかし、簡単には不動産屋が相手にしませんから、私たちがアパートを借りる事もサポートします。)病院代や薬代も、申請した日以降は、無料になります。(場合によれば、直ちに入院が必要な場合もあります。病院との連携も取れていますから、病院の受け入れ態勢も心配いりません。)
住居を手に入れて落ち着いた生活が始められなければ、更生・再出発も無いと考えているからです。生活保護申請をして、住宅取得扶助を受けて、自分の住むところを手に入れるところまで辿り着けることで、落ち着いた生活を始められます。
生活保護を受けて、アパートでの生活が始まったからと言って、再び失敗しないとも限らないので、その後の生活でも様々にアドバイスして行きます。数ヶ月で安心できる方もあれば、頻繁なサポートや、何年にもわたるサポートの継続が必要な方もおられます。
生活保護受給開始後も、安定した生活が続けられるように、継続した支援をしていきます。
住民票を立ち上げて、福祉の制度が利用できるようにしなければなりません。精神疾患などで病院通いも必要な方がいますし、高齢や疾病で介護の手続きが必要な方がいます。病院との連携や、介護事業所との連携で、当事者の方の事情に会った支援ができる体制が出来ています。
これまでの経験から言えることは、ホームレスでの刑務施設出所者の再犯率が40数パーセント、あるいは50パーセント近くと言われている現状で、私たちが支援した場合では10パーセント以下に出来ていますから、私たちの寄り添う支援が役に立っていると思います。生活に寄り添って、何時でも相談を受けられる状態を続ける効果は、更生・自立に役立っていると思っています。
最後に、「自立には仕事」と一番に言う方が多いですが、住居を確保して、落ち着いた生活に辿り着けてから、その生活に合った仕事を探すことが必要です。これまで失敗してきた原因も見定めて、継続可能な仕事を探さなければ、また同じ失敗を繰り返します。間に合わせの仕事では、雇用も安定しません。精神や知能や発達の障碍を抱えているにもかかわらず、「普通」の仕事をしようとして何度も躓き、困窮して罪を犯した人もいます。当事者その人の内面も見据えて、「可能な仕事」の求職活動をさせるように指導しなければなりません。
<毎日新聞・香川版>2011年7月8日
高松保護観察所:出所者の再犯防ごう 自立準備ホーム運営、2団体きょう登録 /香川
◇民間委託、県内で初
◇「周りの人間が支えて、温かい気持ち育てば」
刑務所などを出ても住まいや生活資金、仕事がないために再び犯罪を起こす事態を防ごうと、高松保護観察所は8日、出所者らの一時的居住施設「自立準備ホーム」の運営を委託する二つの民間団体を登録する。出所者らの受け入れをしてきた更生保護施設以外の民間施設に更生保護事業を委ねる新しい取り組みで、県内では初めて。受け入れ態勢の拡充が目的で、登録予定の2団体は年4人程度の受け入れを目指す。【広沢まゆみ】
登録されるのは「路上の杖」と「NPO法人香川野宿者支援の会」(いずれも高松市)の2団体。ともに野宿者支援を掲げて活動を始めたが、身寄りや生活資金のない出所者の支援にも取り組んでいる。
従来は出所者に生活保護を受給させ、食費や家賃など必要な生活費を賄ってきた。保護観察所に登録されると、1人当たり日額約4500円の委託金が国から「自立準備ホーム」の受託団体に支払われ、出所者の生活費などに充てられる。出所者の行き場をより多く確保することで、仕事を見つけさせて自立を図り、再犯者を少なくする狙いがある。
出所者1人当たり1、2カ月の仮住まいを想定しており、食事の提供や緊急時の24時間対応、団体職員による1日1度の面会などの支援に取り組む。
これまで自立のための一時的な受け入れは、法務大臣の認可を受けた民間の更生保護施設が担ってきた。全国に104カ所(7月1日現在)あり、出所者は一定期間、無料で居室や食事の提供を受けられる。県内では、「讃岐修斉会」(丸亀市)が08年度に約100人を受け入れ、平均在所日数は約100日だった。しかし施設定員は約20人で、「常にほぼ満員」(保護観察官)という。
登録される「NPO法人香川野宿者支援の会」の谷本博道代表理事(58)は「孤立が再犯を招く。周りの人間が支えて、温かい気持ちが育てば、罪へのブレーキになる」。
「路上の杖」の大塩幸子代表(64)は「出所したばかりの時に羽を休めて、仕事をしっかり探せる環境が必要。罪を犯すのはちょっとした掛け違いなので、再犯を防ぐ力になれれば」と話している。
◇09年検挙者、再犯42.2%
法務省の統計によると、09年の満期釈放者計1万5324人のうち、約6700人(43・8%)に帰住先がなく、数多くの出所者が仕事も十分な生活資金もないまま、社会に戻っている。そのため再犯に至るケースも多く、09年は14万431人の検挙者のうち42・2%が再犯者だった。この割合は97年から上昇し続けており、問題の抜本的な解決策が模索されている。「自立準備ホーム」は4月に宮崎県の民間団体が全国で初めて運営を受託した。5月末時点で、23都道府県で36団体が登録されている。